血圧を測定するようになっても、その数値の扱いがわからなければ無駄になってしまいます。血圧の値がどれ位になったら病院やクリニックへいく必要があるのか、解説します。
自宅で血圧を測定するようになったら、まずは記録をとるようにしましょう。人間の記憶はあまり当てになりませんので、数日もすれば数字など忘れてしまいます。
血圧が高い場合は医療機関を受診する必要がありますが、どれくらいの数値になったら治療が必要なのか。その辺がよくわからない方も多いと思います。別の記事『目標とする血圧の値』でも解説しましたが、適切な血圧の値は人によって多少の違いがあります。高血圧学会が提唱している『高血圧治療ガイドライン』を参考にして、治療開始が必要な血圧(すでに治療を行なっている方は、目標とする血圧)を考えていきましょう。
ガイドラインでは高血圧の『基準値』と『目標値』という、異なる値が設定されています。二つも数値があると、何を見ればいいのか分かり難くなってしまいますね。本来ならば一つの数値だけを示して、「この数値を超えたら高血圧なので、この数値より下にしましょう」と言えば良いのですが、ある事情により複数の数値が提示されています。(その理由については別の機会に)
『基準値』はその人が高血圧症という疾患を持っているのか、判定の診断基準とする数値です。基準値以上の数値が続く場合に、高血圧症という診断が付くという訳です。ただし、ガイドラインはあくまでも目安を提唱しているに過ぎませんので、実際に高血圧症かを診断するのは医師の裁量となります。高血圧の治療薬を処方するかどうかの判断も同様です。なぜなら、血圧の数値は常に変化しており、上がったり下がったりしています。例えば140/90mmHgという基準値があったとして、それ以上の数値が何割あったら高血圧なのか、それとも平均値で判断するのか。普段は低いが時々高くなる場合はどうするのか。朝は高いが夜は低い場合はどうするのか。そもそも、測っている時間以外の血圧はどうなっているのか… 複雑な要素が絡み合っており、基準値があるからといって単純に判断はできないのです。医師は血圧の数値に加えて、患者さんの年齢や合併症の有無、過去の治療歴、治療への意欲、場合によっては社会的背景まで、様々な要素を踏まえて治療を決定します。「数字を入れたら答えが出てくる」というAIの得意そうな話ではなく、人間的な要素が介在しているのです。
もう一つの数値『目標値』はその名の通り「目標とすべき血圧値」です。様々な統計の結果から、「この数値以下に血圧を抑えておくと、将来的に血管トラブルによる病気を起こしにくくなる」という数値です。ですので、この『目標値』を超えているからといって高血圧という訳ではありません。もしも、血圧の値がこの『目標値』と『基準値』の間であったらどうするのか?基本的には生活改善を行なって、『目標値』まで下げていくことが推奨されています。かなり多くの方がこの中間値にいるのではないかと思いますが、その場合はまず生活改善ということになります。ただし、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病、脳梗塞などの脳血管障害、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、慢性的な腎疾患といった合併症がある場合は、早めに治療を開始する場合もありますので、受診して相談してみることをお勧めします。その他にも、心臓の病気、血管の病気、目の病気(眼底)、その他、早期に高血圧の治療が必要なケースもありますので、何か持病があって心配な方は受診しておきましょう。
自宅で測定していて、医療機関の受診を考慮べき血圧の目安を以下にまとめておきます。定期的に血圧を測定していて、この数値を越えることが多くなったら受診しましょう。血圧は変動していますので、たまに超えてしまうが普段は大丈夫であれば受診は不要です。
これらはあくまで目安ですので、全ての人にあてはまるとは限りません。不安のある場合、一度は受診しておくことをお勧めします。