暖かくなり過ごしやすい春
冬の間に高くなりがちだった血圧の数値も、だんだん改善してくる時期です。しかし、人によっては油断できない季節でもあります。
春になると気温が上昇してきますので、一般的に冬よりも高血圧が改善すると思われがちです。実際、冬の間よりも血圧が下がってくる方が多いようです。しかし、高血圧で通院している患者さんを見ていると、逆に血圧が高くなってしまう方が時々います。
三寒四温という言葉の通り、春は温かい日と寒い日が交互にやってくる時期です。ただ、寒い日といっても、真冬に比べれば気温はずっと高くなっているものです。ところが、晴れてぽかぽか陽気であった翌日、天気が下り坂で冷たい雨が降ったりしすると、とても寒く感じてしまいます。人間は前と比べて気温がどう変化したかで、暑さ寒さを感じる傾向があるからです。真冬に気温が15℃になったら暑いと感じますが、真夏に15℃になったら極寒でしょう。ここまで極端でなくても、春は日毎の気温差が大きくなりがちで、最高気温が前日より10℃以上も変動することは珍しくありません。さらに、一日内の気温差も大きく、地域にもよりますが朝の最低気温と昼の最高気温の差が10℃以上になったりします。寒くなると血圧が上昇することはよく知られていますが、この寒さとは気温のことではありません。体が寒く感じるかどうかです。冬の15℃では暖かく感じて血圧は下がりやすくなり、夏の15℃では寒く感じて血圧は上昇しやすくなるということです。そのため、数日ごとに暖かく感じたり寒く感じたりする春という季節は、血圧が不安定になりがちなのです。
高血圧の薬を飲んでいる人、また治療はしていないが血圧が気になりだしている人は、この季節どんな事に気をつけると良いでしょうか。理想は血圧の変動がなく、低めで安定している状態です。ただし、気温の変化に対応して血圧が変動するのは正常な生理現象ですので、ある程度はやむを得ないことです。できるだけ変動を小さくするためには、「寒い」と感じることが少なくなるように、服装や室温の調整に気を配る必要があります。また、気温の他に血圧が高くなる要因、例えば寝不足やストレス、運動不足など、こうした事をできるだけ少なくするよう心がけましょう。また、一日の寒暖差が大きくなる影響で、血圧も時間帯で大きく変化するか場合があります。一般的に最も気温が低くなるのは早朝ですが、これは元々、血圧が上がりやすい時間帯と重なっています。そのため、日中や夜間と比べて、朝に血圧が極端に高くなっている場合があります。こうした状況を見逃さないため、血圧測定は朝を含めて複数回行うと良いでしょう。
春は次第に暖かくなり過ごしやすい季節です。運動不足を解消し、高血圧を改善していきましょう。