椅子から立ち上がったとき、急に頭がクラクラして立っていられなくなる。
学校の朝礼で、校長先生の長話の途中で気分が悪くなった。
こんな状況を説明するときに、「貧血を起こした」と言うことがありますね。内科の外来を受診した患者さんが「最近、よく貧血になるんです」と言う場合、大概はこのような症状です。
一方、健診などの結果で人によっては「貧血を認めるため医療機関を受診してください」と書かれている事があります。この場合は上記のような症状ではなく、血液データでの異常値を指摘しています。同じ「貧血」でも、状況によって全く別の意味になってしまうのです。ところが、多くの方がこの違いを意識せず、「2つの貧血」を混同しているようです。そのため、ちょっとした行き違いが医療現場で生じることもあります。
「貧(ひん)」という漢字は主に「お金がない状態」を表しますが、「物が欠乏している、足りていない」という意味合いもあります。ですので、「貧血」を文字から理解すると、「血が足りていない」という事になります。まさに検査データで赤血球の量が少ない状態です。では、頭がクラクラするような症状を貧血と呼ぶのは間違っているのでしょうか。そもそも、「貧血」という言葉はいつからあったのでしょうか。昔からあったのだとすると、昔の人達が血液データを知る由もありませんので、違う意味で使っていたと思われます。
科学的な知識のなかった昔の人達も、血液が血管の中を流れているという事は分かっていたと思われます。その血液が十分に循環しないと体に不調が起こります。特に、脳への血流が滞ると、めまいやフラつきを感じたり、場合によっては意識を失ってしまいます。こうした状況を「貧血」と呼んでいたのでしょう。つまり、病院などで使う「貧血」は、体全体の血液の量、特に赤血球の量が少ない状態を表しているのに対して、一般的に使われる「貧血」は一時的に脳への血流が滞って起こった症状を示している訳です。
病院では後者のような症状を「立ちくらみ」とか「脳貧血」と呼んだりします。また、その原因として「起立性低血圧」という診断が使われる事があります。急に立ち上がったときや長時間立っていたときなどに、一時的に血圧が下がってしまい、高い位置にある頭まで血液を送れなくなってしまう場合があります。そうすると、脳への血流が足りなくなり、クラクラしたり意識を失ってしまったりするのです。これは二足歩行をするようになった人類特有の弱点で、常に多量の血流が必要な脳が一番高い位置にあることが原因です。ちなみに、ゴリラやチンパンジーも二足歩行ですが、彼らにも起立性低血圧があるのか…は不明です。
脳の血流低下を防止するため、血管の緊張を保って血液が体の下方へ下がらないようにする仕組みがあります。しかし、自律神経の働きが乱れたりすると上手く作用せず、起立性低血圧→貧血を起こしてしまうのです。その原因は、寝不足、疲労、アルコール摂取、加齢など様々です。また、若い女性にも多い傾向があります。高血圧の治療中の方は、血管を広げる薬を使っていることが多く、起立性低血圧を起こしやすくなるので注意が必要です。特に、夏は血圧が低めになっている(過降圧)ことがあり、立ちくらみの出やすい時期です。定期的に血圧を測定するようにして、低すぎる場合や立ちくらみを感じるときには主治医に相談するようにしましょう。
☆☆☆☆☆ アプリ《血圧ナビ》をご利用いただきありがとうございます。気に入っていただけましたら、お手数ですがレビュー(評価)をお願いします。★★★★★
Appストア レビューのページへ移動します