温暖化現象の影響なのでしょうか、夏の暑さが酷くなってきているようです。私が子供であった30〜40年前の話ですが、最高気温が30℃を超えると真夏日などと言われ、えらく暑かったような記憶があります。ところが、今どき30℃では誰も驚きませんね。地域によって40℃近くまで暑くなる昨今では、むしろ過ごしやすい気温なのかもしれません。最高気温25℃以上で夏日、30℃以上で真夏日、35℃以上で猛暑日と言うそうです。最高気温が25℃ならば、随分と過ごしやすい夏の一日です。もはや現在の日本の気候には合わなくなっているようですので、この辺の定義は見直した方が良い気もします。
最近は熱中症の救急搬送が多くなりました。20年前にはこんなになかった気がします。真夏ともなると、高齢者ばかりではなく若い人もよく救急車で運ばれてきます。さらに今年は、マスク着用の影響で熱中症患者が増えるのではないかと言われています。確かに、呼吸によって出ていく熱も馬鹿にはできません。犬は暑くなると口呼吸をして体温を下げようとしますね。マスクをしていると高体温になるリスクが生じるのは間違いないようです。加えて、炎天下でずっとマスクをしていると変な日焼けになりそうな… まだしばらくの間、マスクの必要な状況は続きそうですが、人に近接していない屋外ならマスクは基本的に不要ですので、臨機応変に対応していきましょう。
そんな、過酷な季節である夏ですが、高血圧という面で見ると良い季節と言えるかもしれません。気温が高くなると、かなりの割合で血圧が低くなるからです。血圧は細動脈という細い動脈の抵抗が強い(流れにくい)と高くなります。気温が高くなるとこの細動脈は広がって血液を流しやすくなり、血圧が低下するのです。外来を受診する高血圧の患者さんをみていると、半数以上の方で冬よりも夏のほうが血圧が低くなっています。中には上の血圧(収縮期血圧)も下の血圧(拡張期血圧)も20近く低くなる方もいます。そのため、夏になると血圧の薬を減らしたり、休止したりする場合も珍しくありません。血圧が低くなりすぎると、立ちくらみなど不都合な症状が出るからです。高血圧の薬を飲んでいる方で、夏場に立ちくらみ(椅子から立ったときなどにフラつき、めまい感、気が遠くなるなどの症状が起こる)が頻繁に起こる場合、主治医に相談してみましょう。ちなみに減らした高血圧の薬ですが、気温が下がって血圧が高くなってきたら元に戻します。
高血圧の治療を受けている方で、過降圧(血圧下げすぎ)の他に注意しなくてはならない事があります。それは脱水症です。高血圧の治療薬として利尿剤という尿量を増やす薬が使われている場合があります。利尿剤を服用している人は、夏場に脱水症になりやすいので要注意です。使用頻度はそれほど高くありませんが、色々な薬を使っても高血圧の改善が不十分な場合などに利尿剤を使用することがあります。代表的な薬剤はフルイトラン(トリクロルメチアジド)ですが、他にも数種類あり、合剤になっている場合(プレミネント、エカード、コディオ、ミコンビ、イルトラ等)もあるので注意が必要です。
何かと厄介な夏になりそうですが、健康を崩さないよう気をつけて乗り切りましょう。