夏の間は良かったのに、冬になると血圧が高くなるんです。
どうしたら良いんでしょう?
寒くなると血圧が高くなる。これはある程度は仕方がないことです。でも、気をつけることで改善はできます。
「寒くなると血圧が高くなる」
この事をすでにご存知の方は多いと思います。しかし、正確には
「寒くなると血圧が高くなる人が多いが、あまり変わらない人もいる」
と言ったほうが良いかもしれません。
高血圧の治療で定期的に通院している方を見ていると、寒くなるにつれて血圧が高くなってくる人が大勢います。ここで言う血圧とは診察室で測ったものではなく、自宅で測定した値のことです。私の感覚的には半数以上の方はある程度の上昇があるようです。一方で、真冬になってもあまり変化しない方もある程度はいます。同じ地域に生活していて、同じように血圧の薬を飲んでいるにも関わらず、寒さで血圧が上がる人と、上がらない人がいるという訳です。当然ですが、冬でも血圧が上がらない側に居たいものです。冬になるとどうして血圧が高くなるのか。その原因を探ることで、冬の血圧対策のヒントが見えてくると思われます。
血圧が高くなっているとき、通常は次の2つのいずれかが起こっています。
①血管が収縮している
②血液の量が増えている
冬に血圧が高くなる人の体内では、この①か②(または両方)が起こっているのです。逆に、冬に血圧が上がらない人は、どちらも起こっていないことになります。ですので、この2つの現象をできるだけ抑えることが、冬の血圧上昇を防止する鍵になります。
①血管が収縮している
「季節と血圧 – 秋編」でもお伝えしましたが、毛細血管の手前にある細い動脈(細動脈)が狭くなると血圧は高くなります。私達が測っている血圧は、上腕にある太い血管の圧力です。その先にある細い血管の通りが悪くなれば、手前の圧力は当然高くなります。
細動脈が細くなる最大の原因は寒さです。寒さを感じると細動脈が縮んで細くなり、血圧が上昇するのです。しかし、冬でも血圧がほとんど変わらない人がいるのはどうしてでしょう。一つは、寒さに対する反応には個人差があるのだと思われます。寒さを感じたときに起こる、細動脈の収縮が強い人ほど血圧が高くなりやすいということです。もう一つは環境的な要因もありそうです。家の中や職場などの環境が、寒いか暖かいかで血圧が変わってくるということです。体質を変えるのはなかなか大変ですが、部屋を暖かくすることはそれほど難しくありません。寒くなってきたら適切に暖房を使用して、適温を保つようにしましょう。
②血液の量が増えている
血液には赤血球を始めとして様々な成分が入っています。ただし、その中で最も多いのは水です。人間の血液の量は、水分の増減による影響を常に受けているのです。ところで、体内の水分量を調整する上で最も重要な働きをしているのは腎臓です。腎臓が尿の量を調整することで体内の水分量は変わってきます。腎臓は水分だけでなく、体内のナトリウムやカリウムなど電解質の量を調整する働きもしています。しかし、塩分量が過剰になると体内のナトリウム量は増えていってしまいます。そして、体内のナトリウムが増えると、体内の水分量は増えてしまうのです。これが、塩分過剰になると血圧が上がる仕組みです。寒くなってくると、お味噌汁が美味しくなってきます。また、ラーメンやうどん、鍋物、おでん等々、汁物を食べる機会が増えてきます。夏に比べて、塩分を摂取する機会が格段に増える訳です。「味噌汁は薄めにして一日一杯まで」「麺類や鍋物の汁はなるべく飲まない」といった注意を払うことで、塩分摂取量が増えないようにすると良いでしょう。
《記事の要点》
冬でも血圧が上がらないようにするために
①適切に暖房を使用して、寒さの刺激を避けるようにする。
②汁物で塩分摂取量が増えないように注意する。