白衣高血圧とは

血圧の話題

家で血圧を測ると低いのに、病院で測るとすごく高いんです。家の血圧計がおかしいんでしょうか。

ほとんどの場合は、血圧計に問題はありません。実際に血圧が上がったり下がったりしているのです。

「白衣高血圧」という言葉を聞いたことはありますか。これは「白衣を着た医師などの前で血圧を測ると高血圧になる」という意味です。

最近の医師は白衣ではなく青い服を着ていたりもしますが… とにかく、診察室で測定すると普段より血圧が高くなる現象です。ただし、血圧が高くなるのは診察室内に限ったことではなく、外来待合室に置いてある自動血圧計で測ったり、健診のときに看護師さんに測ってもらったときでも高くなる場合はあります。
「病院など医療機関で測定すると普段より血圧が高く出る」
広い意味で、白衣高血圧という言葉はこうした現象を表しています。

病院や診察室で測ると血圧が高くなる原因ですが、これは緊張感による影響が大きいでしょう。血圧というものは自律神経の影響をうけて変動をしています。緊張すると交感神経という自律神経の一種が興奮し、血圧を上げたり心拍数を早くしたりします。人間の体の仕組みは、原始的な生活をしていた遠い過去にできました。その頃は、「緊張する=身の危険を感じる」であったはずです。すばやく動いたり、危険から逃げたりできるように、体の血流を増やしている訳です。診察室で身の危険を感じる人はいないでしょうが、慣れない環境であったり(お医者さんの顔が怖かったり?)して、緊張感が出てしまうのだと思います。
私の経験から考えると、白衣高血圧は「出る人」と「出ない人」にはっきり二分されるようです。白衣高血圧のある人は、診察室で血圧を測るとほぼ毎回のように高くなります。慣れてきたら下がってくるということは滅多にありません。一方、白衣高血圧のない人は初めからありません。ご本人の性格による影響だとは思いますが、何年も通院されている患者さんでも、なかなか慣れないものなのですね。自分では緊張していないつもりでも、無意識の所で影響が出ているのでしょう。中には待合室で待っている間にイライラして血圧が上がっている人もいるかも知れませんが…

もう一つ、白衣高血圧に関して興味深い事があります。血圧には日内変動というものがあり、一日の時間帯によって変動しています。多くの場合では朝が一番高く、昼や夜は下がっています。これを早朝高血圧と呼んだりします。自宅で測定した記録を持ってきてくれる方でも早朝高血圧はよくあります。例えば朝は150 / 90、夕は130 / 70といった具合です。そして、その方に白衣高血圧があると診察室で測定した血圧は高くなる訳ですが、それが早朝高血圧の値と同じくらいになることが多いのです。
その理由としてはこんな風に考えいます。早朝高血圧の原因は朝の活動開始に合わせて自律神経の状態が変化するためと言われています。血圧をが上がるので交感神経が活発になるわけです。白衣高血圧でも緊張の影響で交感神経が興奮しているので、自律神経の状態としては早朝高血圧と似通っています。こうした、交感神経が活発になった状態の血圧は、人によりある程度決まっているのではないかという事です。

最近の高血圧の治療では家庭血圧が重視されています。その理由の一つがこの白衣高血圧の存在です。診察室で高くなることは仕方がないことで、自宅での血圧が高くなければ、あまり気にする必要はありません。しかし、診察室で血圧が高いのに自宅で測定しないのはいけません。診療している医師としては、他に判断材料がないため薬を増やさなくてはならなくなります

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