上の血圧と下の血圧の差

血圧の話題

お友達から聞いたんですけど、血圧の上と下の差が少ないと良くないって本当でしょうか。

それは誤解です。上の血圧と下の血圧について考えてみましょう。

「血圧の上と下が近いと良くないって聞いたんですが…」 こんな質問を外来で受けることが時々あります。

テレビで言っていたとか、友達から聞いたとか、情報源はいろいろあるようです。今どきではネット上の情報かもしれません。そう聞いて不安になる方のイメージとしては、
 上の血圧と下の血圧の差 = 血液の流れる力
となっていて、差が小さいと血流が悪いと考えてしまうのかもしれません。しかし、これは全くの勘違いです。血圧が下がったタイミングでも血液は流れています。

上の血圧は収縮期血圧とも呼ばれます。心臓が収縮したときに血液が動脈へ送り出され、血管内の圧力は高くなります。このときの圧力なので収縮期血圧といいます。一方、下の血圧は拡張期血圧とも呼ばれます。心臓は収縮して血液を送り出した後、次の収縮に備えて拡張し、血液を静脈(正確には肺静脈)から取り込みます。その間に動脈内の血液は先へと流れていくため圧力が下がっていきます。心臓が次の収縮を始める直前が最も圧力の低い状態となります。心臓が拡張しているときの血圧なので拡張期血圧といいます。この収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧と呼びます。これが大きいとか小さいとかいう心配があるわけですが、これが単純に良い悪いとはいえないのです。むしろ脈圧が大きい(上の血圧と下の血圧の差が大きい)方が問題となることがあるくらいです。

上の血圧(収縮期血圧)が上がる原因の一つに動脈の柔軟性低下があります。本来、動脈の壁はゴムホースのように弾力性があり、心臓から血液が押し出されたときには広がって圧力を吸収しています。動脈硬化により動脈の壁が固くなってくると弾力性を失い、圧力を分散できなくなるため血圧は高くなります。高齢者で収縮期血圧が高い場合、こうした事が主要な原因となっているのです。同時に下の血圧(拡張期血圧)も多少は高くなりますが、上の血圧の上昇が大きいので差は広がることになります。また、心臓にある大動脈弁の閉まりが悪くなると、心臓が拡張している間に大動脈から血液が逆流してくるようになります。そうすると血管の圧力が低下しやすくなり、下の血圧(拡張期血圧)が低くなってきます。高齢者で脈圧が大きい人、特に拡張期血圧が低い人では、心臓の弁に問題がないか注意する必要があります。このように、血圧の上と下の差が大きくて良いということは特にありません

今度は脈圧が小さい場合を考えてみましょう。これは上の血圧が下がるか、下の血圧が高くなるということです。高血圧の視点で見ると、上の血圧が低いのは良いことです。動脈の壁に柔軟性があれば上の血圧(収縮期血圧)は上がりにくくなります。
一方、下の血圧が上がるのは高血圧の悪化を意味します。動脈硬化の影響もありますが、塩分過剰などで血液のボリュームが増えても高くなります。このように、脈圧が小さい(圧較差が小さい)と言っても良い場合もあれば悪い場合もあります
皆さんは 上の血圧と下の血圧の差を気にするよりも、それぞれの高さを意識したほうが良いでしょう。

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