新しい高血圧治療ガイドライン 前よりも厳しく!

血圧の話題

テレビで血圧は125より下にしないといけないって言ってました。私はそれよりも高いのだけど大丈夫でしょうか。

学会というお医者さんの団体が、これくらいまで血圧を下げましょうというガイドラインを作っています。それが更新されたとき、前よりも目標が厳しくなったんです。

日本高血圧学会という団体があり、そこから「高血圧治療ガイドライン」というものが発表されています。これは主に医師向けに、高血圧治療の指針を示すために作られているもので、医師は日常の診療でこれを参考にしていきます。ただし、一つの学会が作成したガイドラインであり、どの程度の重きを置くかは医師の裁量次第になります。ガイドラインの数値を目指して治療を行なっていく医師もいれば、ほとんど影響を受けない(または存在を知らない?)医師もいます。

一般の方はガイドラインがあるのなら、それに沿って治療を行うのが良い医療であると感じることでしょう。しかし、必ずしもそうとは限らないのが、人間を相手にした医療の難しいところです。2019年に発表されたガイドラインによると、合併症のない75歳未満の成人で目標血圧は125/75mmHg(家庭測定の血圧)です。この数値は過去のものよりも大幅に低く設定されました。様々な調査の結果から、この数値以下にすれば脳梗塞や心筋梗塞などの血管トラブルによる疾患を起こす確率が低くなることが分かっているからです。ただし、目標血圧を超えているからといってこれらの疾患に必ずなるわけではなく、逆に目標血圧以下でも脳梗塞や心筋梗塞になる場合もあります。あくまで統計に基づく、確率の話なります。ところが、患者さんは一人ひとり体の状態は違いますし、社会的、家族的な背景も様々です。治療に意欲的で頑張る人がいる一方で、あまり積極的でない人、時間がない人、経済的に大変な人… 様々な人がやってくる外来で、同じ数値を設定して治療を行なっていくことは無理です。125/75mmHgを達成するために、多量の内服薬を使い、厳格な食事療法や運動療法を行なっていく。それで良い人も当然いますが、付いて行けずに治療から脱落してしまう人も出てくるでしょうし、その方がよっぽど不幸です。

「その人にできる範囲でやっていく」という考えが治療の現場では必要で、これは患者さんと医師とのコミュニケーションの上で成り立つ事です。ガイドラインは参考にしつつも、それぞれの患者さんに適した治療を行う事が良い医療だと思います。高血圧の治療は何十年も続いていきます。皆さんも出来るだけ良いコントロールを目指しつつ、無理はせずに持続可能な形で生活改善を行なっていきましょう。

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